ダイヤモンドメディア株式会社 ダイヤモンドメディア株式会社

CULTURE文化・制度

代表インタビューSTORY

vol.05

ダイヤモンドメディア流ホラクラシーの中身

前例のない中で作り上げたユニークなしくみ

vol.05

ホラクラシーに取り組む上で不可欠な「情報の透明性」

前回、ホラクラシーのメリットを語っていただきましたが、逆にホラクラシーの課題はありますか?

武井 理論的には、ホラクラシーのほうがヒエラルキーよりも優れているのは間違いなくて、両者を比較してメリットデメリットを語る必要性もないと、我々は思っています。ただ自分たちがやってきていくつか失敗もした中で得た教訓というか、ホラクラシーに取り組む上での注意点は、いくつかあります。

まず一つ目は、データの整備をきちんとするということです。ヒエラルキー型組織と違って、トップダウンで物事は決まらず、メンバーが話し合って物事を決めていくのですが、必要な情報が見える状態になっていないと、客観的合理的な判断ができません。感情論になって、意思決定に至るまでに不要な時間がかかってしまいます。

「給料バブル」を発生させないためのしくみ

ここ10年くらいでホラクラシーという考え方が出てきたのには、何か理由があるのでしょうか?

武井 もうひとつは、給料を自分たちで話し合って決めるということをする上で経験した失敗なんですが、過去2回ほど、「給料バブル」と呼んでいる状態に陥りました。ホラクラシーって、会社の中に市場の原理を取り込むので、株式市場さながら需要と供給でものごとが決まっていくんですね。給料も、株価のように労働市場での相場と社内の相場で決まります。ただ、市場原理の危険なところは、バブルが発生することです。我々は、給料がどんどん上がっていってしまうという「給料バブル」を2回ぐらい経験しました。それをきっかけにバブルについて調べたのですが、そもそもバブルというのは、今の科学では予知できないそうです。ただ、バブルを誘発する要因は分かっていて、「未来に対する期待から生まれる」ものだと。それ以来うちの会社では、給与を決めるときに未来に対する期待値というものは一切入れないことでバブルを抑制することにしました。あくまで今の時点のその人の価値に対して給料の額が決まるので、「今後1年でこんなことをやります」というプレゼンは必要ないんです。なのでダイヤモンドメディアでは職能給や職務給という旧来の言葉を使わず、「実力給」と呼んでいます。今より実力が付いて労働市場での価値が高まったら、その後の給料で報いるという考え方です。

ホラクラシーにおける個人の能力の活かし方

ミーティングの様子

各メンバーの役割や責任というのは、どのように決まっていくのでしょう?

武井 本来会社というのは、ビジネス的な合理性と人間性や心理に関わる部分と、両方をカバーすべきものだと思うんです。でも、今までの経営システムって、基本的にお金の側面からしか組織やビジネスというものを捉えていないんですよね。働く人にうつ病が増えていたりするのは、そこに問題があると思っています。どうしてそういうひずみが発生するのかというと、その人の持っている能力と会社組織から与えられた役割のミスマッチによる不具合、これが悪の根源だと思うんです。でも、これまでの組織のあり方だと、そのミスマッチを調整するのがとても難しいんですね。

一般的な組織図には、実は二つの要素があります。ビジネスモデルを合理的に回すための機能的な設計図という側面がひとつ。もうひとつは人事的な側面です。この二つが合わさって、各自の仕事はマトリックス型で定義されているんです。縦軸で見ると、平社員、係長、課長、部長、取締役、社長というレイヤーがあり、横軸は事業部とか部署に分けられている。それぞれの四角が交わるところに、ジョブディスクリプション、人事評価の基準、大まかな給与の相場が設定され、そこに人が当てはめられていくのが、ヒエラルキーに基づいた組織のあり方なんです。

でも、人間ってそんなに器用なわけじゃないし、各自の得意、不得意はバラバラだから、その四角にぴったり当てはまる能力をもつ人というのはなかなかいないですよね。しかも給与が連動しているということは、降格は給与の額が減るということにつながり、すごくダメージが大きい。そうすると、会社としては人を簡単に昇格させることはできません。決められた四角をはみ出すような仕事をした人を、会社はうまく評価できないしくみなんです。

働いている人が、自分の本当に得意な部分とかやりたいことに力を発揮できないというのが、ヒエラルキーに内在している大きな問題です。だから、ホラクラシーに取り組むときは、肩書をなくすとか情報をオープンにするということだけではなくて、どうやってその人の給料を決めるかという評価制度にまで踏み込まないと、結局全部を整えることはできないんです。

うちの会社では、その人が最終的に会社にもたらしている価値を色々な側面から――社外での相場、社内での相場、それからもちろん、その人が生み出したアウトプットという定量的なデータも――総合的に評価をします。さらに、各自の給料や仕事の情報を全部オープンにすることで、そこが整うようにしてあるんです。

結果として、働く日数は少ないけれども給料が高い人もいれば、ダイヤモンドメディアの中だけでは持っている力を持て余すので自分の会社も立ち上げたり、フリーランスで色々な仕事をしていたりという人が、結構います。単に「副業した方がいいよね」という話じゃなくて、「その人が持つ能力をちゃんと消化し切るためにどうしたらいいか」を考えた結果なんです。

前回のお話で、ホラクラシーはやろうとして始めたのではなく、やってきたことが、たまたまホラクラシーという考え方に合致したということでした。こういう取り組みには、何かヒントがあったのでしょうか?

武井 我流ですね。特に評価と給料の制度に関しては、世界中探しても前例が全くなく、自分たちで試しながらやってきました。実際にやってみて、「なるほどね」という発見の繰り返しです。もっと人数が増えていけば今のやり方とは違うものが必要になるかもしれないし、これからも自分たちなりのやり方を模索していくのだと思います。

ありがとうございました。インタビューはこれで終了しますが、またダイヤモンドメディアの歴史が増えたら、このページも更新していけたらと思います。(了)