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『管理なしで組織を育てる』「はじめに」を全文公開します

2019年3月20日、当社代表・武井浩三が2冊目の著書管理なしで組織を育てるを上梓しました。出版元の大和書房様よりご快諾をいただけたので、本書の「はじめに」の全文をご紹介します。

はじめに

組織にモヤモヤしているあなたへ

「うちの上司、ダメなんだよなぁ……」
「悪い人たちじゃないんだけど、このチームはパフォーマンスが低いな……」
「この組織、このままだとあと数年、いや、下手したら数ヶ月で行き詰まるだろうなぁ」
そんなモヤモヤを抱えながら働いているビジネスパーソンに何か気づきがあるかもしれないと思い、僕はこの本を書くことを決めた。
僕は2007年に仲間たちとともにダイヤモンドメディアという会社を立ち上げた。
経営の常識を知らなかった僕らは、試行錯誤しながら「良い組織とは何か?」を考え続けた。気づけば、一般的な会社組織とは異なる形に成長し、「ホラクラシー」「ティール組織」などに代表される「管理しない経営スタイルの会社」と言われ、注目してもらえるようになった。

とは言え、最初に断っておくと、この本は実用的な「ホラクラシー」「ティール組織」の運営方法について体系的にまとめた本ではない。僕たちの創業時からの歩みを赤裸々に書くことで、「どうしたらそんな会社ができるんですか?」とよく言われる僕らの組織づくりのエッセンスを読み取ってもらうことを狙いとした。その理由をまずはお伝えしたいと思う。

1冊目の本(『社長も投票で決める会社をやってみた。』WAVE出版・2018年)を書いてから、組織づくりについてご相談をいただくことが増えた。
しかしずっと違和感があった。組織論になるといつも「どう成果を上げるか」や「上司が部下を育てる方法」などのHow to に終始したがる方が多かったからだ。
「ダイヤモンドメディアではうまくいったかもしれないけど、こういう時はどうしたらい
いですか?」
そんな質問を数多く受けてきたが、その度に「そういうことじゃないと思うんだよなぁ」という気持ちが拭えなかった。

あるとき気づいたのが、「組織づくりと子育てには共通点が多い」ということ。

子育てでも、慣れないうちはHow to ばかりを追いかけてしまう。子供を寝かしつける方法、離乳食を食べない子になんとか食べさせる方法……。
でも、僕自身が2人の子供を育てていて思ったことは、How to の知識は少しだけ子育てを楽にしてはくれるけれど、子供の育ちに本質的な影響を与えることは少ないということだ。

なぜならそこには「子供自身が何をしたいかを親が観察する、汲み取る」という視点が抜けていることが多いからである。もっといえば「(子供を)コントロールしたい」という親のエゴだとさえ思う。

僕はダイヤモンドメディアを経営するにあたり「組織自身が何を求めているか」を観察することに終始してきた。ある時から、組織は生き物であり、有機的なものだと考えてきた。

今までのヒエラルキー型の組織づくりは「パーツを集め、上手に組み立てる」「正解がある」という、言うなれば「プラモデル式」だったのではないかと思う。僕たちが取り組んできたのはそうではなく、「組織自身がどこに向かいたがっているかを観察し、成長を妨げる要素を減らす」「正解がない」という組織づくりだ。

だから僕たちの組織づくりを体系的に整理したとしても、それを出版して偉そうに「教える」っていうのはなんだかしっくりこない。
ひたすら「良い組織にするためには?」と自問自答しながら歩んだ結果が今であり、今が完璧だとも思っていないからだ。

ただ、そのストーリーを参考にしてもらうことはできるかもしれない、と思った。

子育てにおいて、その子が大人になってからだって「正しい子育てだったかどうか」なんてわからない。
だけど面白い人に出会ったときに「どんな人生を送ってきたのかな」「この人の親御さんはどういう子育てのアプローチをしたのかな」と気になることはある。

だから今回は僕たちのストーリーを正直に語ることによって、「自分たちの組織だったらどうするかな」と考えてもらえたら、と思ったのだ。

 

「人」ではなく「組織の形」に目を向ける

では、僕たちの会社について何も知らずにこの本を手にとってくれた人に、簡単に自己紹介をしたいと思う。ここ2、3年の間、僕らの会社、ダイヤモンドメディアの取り組みについて、メディアの取材や講演の機会が急激に増えている。

注目されているのは、次に挙げるような少し変わった組織のあり方や働き方だ。

・上下関係のないフラットな組織構造(役職、上司・部下という関係がない)
・メンバーに対する徹底した情報公開(各自の給料の額も!)
・給料はみんなで話し合って決める
・社長と役員は選挙と話し合いで決める
・自由な働き方(働く場所、時間、休みは各自が決める。副業・兼業も自由)

これまでの一般的な組織では、ヒエラルキー型の組織構造が前提となっていて、経営者や上司が目指すゴールやルールを決め、部下に対して一方的にタスクを割り振ってやらせるという「管理」が必要不可欠だ。

そうではなく、メンバーそれぞれが話し合って自律的に動いていくのに任せるのが僕らのやり方。

ひとことで言うと「管理しない経営」だ。

また、僕らの組織のあり方は、冒頭でお伝えした通り「ホラクラシー」や「ティール組織」というキーワードで語られることも多い。

「ホラクラシー」はアメリカの起業家であるブライアン・J・ロバートソン氏の造語で、従来の中央集権的なヒエラルキー型に代わる新しい組織形態として提唱されたものだ。
意思決定をトップダウンでなく組織全体で分散して行うこと、個々の役割をメンバーの主体性に基づいて柔軟に決めていくことなどが特徴で、そのためのルールが「ホラクラシー憲法」としてまとめられている。
ロバートソン氏の書籍『ホラクラシー 役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』(PHP研究所・2016年)は、その実践方法を詳細に解説したものだ。

一方、アメリカでエグゼクティブ・コーチや組織開発の仕事をしてきたフレデリック・ラルー氏が人類の歴史における組織の進化を5つの段階に分類し、たくさんの事例とともに解説した本が『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版・2018年)だ。
「ティール組織」は進化の5段階目に当たる次世代型の組織を指す。
「自主経営(セルフ・マネジメント)」、「全体性(ホールネス)」、「組織の存在目的」の3つを重視しているという共通点があり、ホラクラシーもその実践例のひとつとされている。
日本でも、2016年に『ホラクラシー』、2018年に『ティール組織』が出版され、このような新しい組織の形が注目され始めている。

『ティール組織』では「解説」でダイヤモンドメディアが紹介されていることもあり、僕らもそういった組織のひとつと認識されるようになった。
そのため、「いつからホラクラシーを導入したのですか?」とか「どうやってティール組織を実現したんですか?」とか聞かれることも多い。
でも、僕らはそういうものを導入したり目指したりしたわけではない。

会社を創業してから約10年、自分たちが「こうありたい」という状態をどう実現するか、「こういうのって嫌だな」ということをいかに解決するか、その都度必死に考えながら試行錯誤してたどり着いたのが今の状態で、その試行錯誤はまだ終わっていない。
起業した頃の僕と仲間たちは、会社経営のための基本的なルールも知らず、いろいろな壁にぶち当たりながらなんとか進んできた。
何も知らなかったからこそ、ある意味純粋に、進みたい方向を目指すことができたのかもしれない。

そうやって作り上げてきた僕らのやり方とホラクラシーやティール組織との間に共通点があるのは単なる偶然ではない。
従来のヒエラルキー型の構造やそのためのマネジメント手法はかつては意味があり、よく機能していたが、時代の変化とともに様々なゆがみが生じてきている。
そのゆがみの中で苦しんでいる人が増えてきて、「管理しない経営」が従来型の組織の限界の突破口になりうるものとして求められているということなのだと思う。

さて、話を戻そう。

今、組織の中でどうしようもない歯がゆさを感じている人へ。

もしかしたら皆さんの脳裏には、自分たちの組織がうまくいかないのは「あの人」のせいだ、という、誰かを責めたい気持ちがあるのではないかと思う。

ポンコツな上司や、既得権益への反発。
それらを否定はしないけれど、視線を「人」から「組織の形」へと移してみると、新しい発見があるはずだ。

これを読んでいるあなたが、今の働き方や組織に疑問や違和感を覚えているのだとすれば、これからお伝えする僕らの考え方や実践を、新しいやり方を切り拓くヒントにしてもらえれば嬉しい。
ぜひ、続きは書籍でお読みください。