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(前編)ダイヤモンドメディアで「株主の権力が無効化された」ってほんと? ビジネス法務の専門家と公認会計士に聞いてみた!

(前編)経営管理組合ってなに?
今までと変わること、変わらないことを徹底解説!

ダイヤモンドメディアが昨年10月に発表した資本政策である、経営管理組合の発足による株主の権力の実質的な無効化。

【お知らせ】ホラクラシー資本政策として、「議決権」に権力を収束させない仕組み作りを開始しました

 

発表から半年が経つ頃、私たちは当社ビジネス法務顧問の齊藤源久(さいとう・もとひさ)さんと公認会計士の鴇田英之(ときた・ひでゆき)さんをお招きして、代表の武井と3名での座談会を実施しました。

今回の座談会の目的は2つ。

  1. 「新しい資本政策によってダイヤモンドメディアには権力がなくなった」というけれど、メリット・デメリットを含めて社内のメンバーが理解していないのできちんと解説したい!
  2. 実際、この取り組みは専門家の人たちから見てどうなのか知りたい!

 

長くなるので前後編、2回に分けてお届けします。

 

聞き手:中根愛/文:青柳真紗美(共にダイヤモンドメディア)

左から、武井・鴇田氏・齊藤氏・中根

 

<座談会メンバープロフィール>

齊藤 源久 氏(中央右)

株式会社More-Selections 専務取締役
大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数々のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。2014年より、企業の法務部門に特化したコンサルティング会社、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。法務担当者向けの研修の開発・実施、WEBメディアの編集、リーガルテック関連の新規事業策定などを担当している。

 

鴇田 英之 氏(中央左)

鴇田公認会計士事務所 所長/株式会社鴇田ビジネスパートナーズ 代表取締役社長
平成10年10月公認会計士2次試験合格し、平成10年12月より太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)に入所。以後、監査部にて会計監査(金融機関・製造業・旅客業・倉庫業等)に従事した。直近では、IPOを目指す会社を支援する企業成長サポートセンターと兼務し、IPOを目指す会社の会計制度や内部組織体制の構築支援や、ショートレビュー業務や財務デューディデリジェンス業務などに従事し、多くの会社の上場経験を得た。
平成30年3月にEY新日本有限責任監査法人を退所・独立し、現在、鴇田公認会計士事務所及び株式会社鴇田ビジネスパートナーズを設立。経理処理及び税務支援業務のほか、J-SOX(財務報告に関わる内部統制)や内部監査の構築支援業務に従事している。その他、上場準備会社の非常勤役員に就任している。主な書籍として、「有価証券報告書の作成実務」(中央経済社)、「監査役監査の基本がわかる本」(同文館出版)などがある。

 

そもそも経営管理組合ってなに?

−みなさま、今日はありがとうございます。早速ですが、この経営管理組合ってなんなのでしょうか? 従業員持株会みたいなものですか?

武井:いえ、違います。従業員持株会って、実質的には従業員への福利厚生を主な目的として組成・運用されるもの。それに対し、昨年作った経営管理組合の目的は、議決権を3分の2(67%)以上保有させ、特定の個人への権力の集中を防ぐことが目的です。

 

−経営管理組合が発足したことで、具体的に何がどう変わったんですか?

齊藤:株主の意向に関わらず、社内のメンバーによる総意で重要な経営判断も下すことができるようになったことです。

武井:経営者の立場から言えば、もともと上下関係はない組織ですが、仕組みとしても「本当に安心な場」を作れたかと。
今までの資本構造だと、極端な話、僕が独断で「ごめん、この事業部、今月末に売却するから!」みたいなことをやろうと思えばできたんですよ。今はマジでそれができない。

 

−組合に対して出資している感覚はないんですが…

武井:あ、そこはね。みんなが出資しているのはお金ではなく労働。労働を出資している、平等な組合員という立場です。

 

−そもそも経営管理組合を発足することによって解決したかった課題って何なのでしょう?

武井「なんだかんだ言って最終的には株主に権力が帰着してしまう」という状態を無くしたかったんです。
ずっと「会社に関わる人全てが幸せになれる組織づくり」を目指してダイヤモンドメディアと向き合って来て、その中で出た一つの結論が「会社の中に権力を生まない」ということでした。
それが「上司部下なし」「決裁権、人事権が個人に帰属しない」といった、最近面白がってもらえるいくつかの取り組みです。そういう組織でもみんなが正しい判断をタイムリーにでいるように情報を透明化して、アクセス性も担保して…。色々な所にメスを入れて改善してきましたが、ずっと感じていたモヤモヤは「結局会社は株主のものだ」という考えでした。
そのころは僕が筆頭株主。裏を返せば僕が権力を行使しようと思えばできてしまう。そんな「株主の権力」を実質的に無効化するスキームができれば画期的だと思ったんです。
このモヤモヤは初期の頃からあったんですが、何しろ法律で決まっている話だし、ここを変えるとなると前提から考え直さないといけないことが多くて。だからいろんなところが整ってから株について考えようと思っていました。

「株主の権力を実質的に無効化するスキームを作ってみたかった」と語る武井


でもここ数年、Facebookやグーグル、サイバーダイン社などが種類株の発行に取り組んでいるという話を聞いて。たとえば創業者に議決権を100倍付与する、というようなことを行う企業が出てきたんですね。それで「これならうちもできるかも」と思った。当社の取り組みへの理解が深い齊藤さんと鴇田さんに相談して、色々整えて。やっと、昨年末に体制が整ったという感じですね。

もし上場したくなったら?

−「経営管理組合に議決権を持たせて、権力を無効化する」。お二人は最初に聞いた時、どう思いました?

齊藤:いやぁ…遂にここまできたか、と(笑)。武井さんは僕がお付き合いのある経営者の中でも飛び抜けて組織づくりに関してはビジョナリーな方で、描いたビジョンを色々実現していく人だけど。
相談された時には、今はまだ上場の予定は決めていないとのことだったけど、上場を視野に入れているならどうなるんだろう? と、まずは心配になりましたね。

鴇田:それは僕も思いました。IPOはどうなるんだろうなと。あとは結構、武井さんが何を言ってるのかわからなかった(笑)。

武井:すみません(笑)。
今回の取り組みにおいて重視したのが、「株式会社の良い点は残したまま『サステイナブルな仕組み』として(権力が無効化した状態を)構築したい」ということでした。外に別の株主が生まれても維持できる仕組みであり、外部から資金調達する時に邪魔にならない仕組みになるということには注意しました。
極論、これを導入ことによって上場が選択できなくなるのはできれば避けたいな、と。
ただ、従業員をはじめとするいわゆる「労働者」と「株主」が向かい合う対等な関係性が必要だと思っていました。
今の会社法だと、結局労働者と株主のシーソーゲームになっているんですよ。どちらかが利益を取ると、もう片方が損する仕組み。それを「まぁまぁ」となだめるのが経営者、みたいなね(笑)。
そもそも、会社は一つの器。株主も経営者も従業員も同じ器に乗っているんです。株主が売り上げを作ったっていいし、事業提携や人材供給をしてもいい。「お金を出して、あとはリターンを期待して待つ」っていうのは、かなり古い考えだと思います。

鴇田制度として整ってくると、「組合が筆頭株主であり続ける」という仕組み自体の面白さも理解できるようになりました。ダイヤモンドメディアのように小さなチームが有機的に生まれたり収束したりしながら自走している組織では、今までの「株式会社」で当たり前だった指揮命令系統が必要ない可能性が高い。
昔は、価値を生むための施策は上から順番に考えていたんですよ。資産家がいいアイデアに投資して、正しい判断ができる経営者が従業員に指示を出して、マネジメント層は従業員が何時から何時まで働いたかを管理すれば利益を生むことができた。だから最終的に企業の利益は株主に帰着するのが当たり前だった。お金を出しているのは株主だから、権力も株主が持っていた。
部長がいて、社長がいて、その上に株主がいて…上から順番に会社の経営に対する意見が伝達される。従来のヒエラルキー構造ですね。ただ、ダイヤモンドメディアにはそうした構造そのものがない。
資本はお金ではなく究極的には「人」。判断は上司が行うものではなく、お客様目線に立って自分たちで考える。
実態として、株主が最終的に権力をもつという構造自体がマッチしていなくて、そこに違和感を覚えていたんだなというのは今考えると納得できますね。

 

ダイヤモンドメディアが本来的な意味での「Public company」のあり方を提言できる日も近い・・・?

 

武井:上場企業に求められるコーポレートガバナンスコードは次の5つの基本原則から成り立っています。「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」。
これってすごく素晴らしいですよね。ダイヤモンドメディアで僕らが実現したいことと重なる部分が多い。
だけど、責任、意思決定、評価などがピラミッド構造に設計されてしまうと、究極的には実現できないのではないかと。コーポレートガバナンスの目的が「説明責任を果たす」「責任の所在をはっきりさせる」というニュアンスが強いために、事業責任者や意思決定者にたどり着くように組織が設計されているんです。
ダイヤモンドメディアでは成果も責任も分散化しているのが特徴で、経営自体も分散化しています。だから何か問題が発生したとき、犯人探しをしても犯人にたどり着かないんです。
問題が発生した時に「誰の責任だ?」と言っていても意味がないと思いませんか。もちろん個人の感情として色々と思うところはあると思いますよ。でも、基本的にそういう時はどうやったら問題解決できるかしか、ダイヤモンドメディアのメンバーは興味がないんですよね。

鴇田:組織図の概念のように役割や明確にする必要性を求めていた時代もありましたが、今は明確に変わってきた感じですよね。

 

−社外の人と話すと、「でもリーダーがいないとプロジェクトって進みませんよね」「そうは言っても問題が発生した時は誰が謝りに行くんですか」とか聞かれます(笑)。

武井:リーダーは肩書きとして決めるものではなく、自然発生的に決まっていくという考え方かもしれません。子供のころ、みんなで遊んでいると「こいつにはかなわない」みたいなヤツ、いましたよね。それがガキ大将であり、リーダーだった。でもそこに上下関係はなく、同じ友達の輪。でももし誰かが投げたボールで窓ガラスが割れちゃったら、一緒に謝りに言ってくれたり、助けてくれたりね。

 

−ありがとうございます。後編では、経営管理組合のデメリットなどについても聞いていきます。

 

>>>(後編)公認会計士とビジネス法務のプロは、経営管理組合をどう見ている?