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(後編)ダイヤモンドメディアで「株主の権力が無効化された」ってほんと? ビジネス法務の専門家と公認会計士に聞いてみた。

カテゴリー: 経営について

(後編)公認会計士とビジネス法務のプロは、経営管理組合をどう見ている?

ダイヤモンドメディアが昨年10月に発表した以下の資本政策について、当社ビジネス法務顧問の齊藤源久(さいとう・もとひさ)さんと公認会計士の鴇田英之(ときた・ひでゆき)さんをお招きして、代表の武井と3名での座談会を実施しました。(※前編はこちら

【お知らせ】ホラクラシー資本政策として、「議決権」に権力を収束させない仕組み作りを開始しました

聞き手:中根愛/文:青柳真紗美

 

 

経営管理組合のデメリット

ー経営管理組合の総意によって重要な経営判断も下せる、ということはわかりました。では、組合内での意思決定のルールはどのようになっているのでしょう?

武井:ざっくりいうとルールは2つです。
「権力で物事を決めない」ことと、「多数決で決めない」こと。言い換えると「話し合い」と、「決められる人が決める」ということです。
重要視するのはコンセンサスではなくコンテクスト。通常の「コンセンサス」を重視する組織だと、基本的に物事を多数決で決めるため身動きがとれなくなるんですよね。
それを乗り越えるのが、「コンテクストを重視する」というスタイル。自分とは意見が違うけど、やりたい人がいるならいいんじゃない? というのもあり。委ねるという選択肢が用意されている。

齊藤:意思決定するにあたっては、「どうやって決めるかをまずみんなで決める」というところから始まるのがルールです。いろんなパターンが用意されていて、比較的どんな決め方にも対応できる。ただ、どんなに話し合っても決めることができず、どうしようもなくなったら多数決で決めるということになっています。これは、対外的信用を保つためです。

武井:僕は個人的には「多数決で決めてもいいこと」って限られていると思っています。経営判断や顧客に影響が出ることは、多数決で決めてはいけないと思う。

齊藤:あまりこういうことは言いたくないですが、大きな会社で多数決をとる場合、実はどちらを選択するかは上司の顔色を伺いながら決めていることも多いと思うんです。
多数決というやり方を使って、「みんなの総意だ」というアリバイを作る。これは大企業病の一種ですよね。その点、このやり方だと多数決の欠点は排除されていきますね。

武井:まぁ、極論ですが、強い意志を持っている人は組織運営においてそこまで問題ではないんですよ。どっちでもいいと思っている人が権力になびく。そこから歪みが発生するんですよね。

 

ー今回の取り組みの「デメリット」ってあるんでしょうか?

齊藤:時代の流れに乗っているとは思うんですが、そうは言っても珍しいですからね。デメリットと言えるかはわからないのですが、信用性の担保は一番の課題になるかもしれませんね。

武井:確かに。同時進行で金融機関からの資金調達を進めていたんですが、株主について説明した時、銀行の稟議が一回止まりました(笑)

鴇田:前編でも話しましたがIPOできないのでは、という懸念は頭をよぎりましたね。でもこの組織が成長して上場できたら、それは大きな社会の転換点かもしれません。
自走して、お互いを牽制しあって、各自が管理されることなく動機を発揮して。
そもそも内部統制体制を整えなくていいので費用対効果は高いと思うんです。それを数字でも裏付けを見せられたら面白いなぁと。
不正もなければ費用対効果も高い、利益も高い。「こういう組織体制だから得られた価値」を市場がどう評価するかには興味があります。

「この組織が成長して上場できたら、大きな社会の転換点かも」と語る鴇田さん

 

齊藤:それは同意です。ですから、上場できる確率を最大限残す形でやってきました。

鴇田:具体的なところでは、J-SOX法のルールをはねのける何かが必要になるかもしれませんね。
一般的な組織では部長などをはじめとする上長が決まっていて、今年のリーダーはこの人、監査はこの人、などといった役割がありますよね。でも、ダイヤモンドメディアではみんなで見ている。情報は公開されていて、誰でもいつでもアクセスできるという状態。通常の企業では内部監査や内部統制が必要だけど、全員が会社のお金のことを知っているから不正や横領は基本的に発生し得ない。売上や経費の過大計上もない。
だから、監査も楽になる。もし上場したとしたら、かなり上場維持コストも低くなるんじゃないでしょうか。

公認会計士とビジネス法務のプロは、この仕組みをどう考える?

武井強制的な内部監査ではなく、自浄作用が働くための仕組みづくりが企業に求められるような動きが生まれてくると新しい世の中になっていくと思いますね。
例えば株取引における「インサイダー取引」ってよく問題になりますが、内部情報だから問題になるわけで。情報を公開してしまえば内部情報という概念自体がなくなりますね。

鴇田:これはすごく面白い視点ですよね。プロセス自体が常に開示される。このことによる影響は非常に広範囲に及ぶと思います。まず、決定前情報という概念そのものがなくなります。また、今、投資家保護の観点から企業に課されている情報開示も、ほとんど必要なくなるかもしれない。与信の分散化も可能になる。

鴇田:「働き方改革」と色々なところで叫ばれていますが実態がともなわないところが問題視されています。実現可能なアイデアはこういう現場にあるように思いました。ルールや既存の習慣から離れることを恐れて、変化することに踏み切れない企業に対して、一つのあり方を示してもらえたらと思います。
権限と指揮命令系統が少ない組織の一例として、実績を積み重ね、広めていく。もしかしたらダイヤモンドメディアは、そういう宿題を課せられているのかもしれませんね。

齊藤:僕が面白いと思ったのは、そもそも、一番株を持っている武井さんが「自分の権力を無効化してくれ」と言い出したことですかね(笑)。
それから、議決権を持っているのが正社員だけではないこと。業務委託やアルバイトのメンバーも一つずつ議決権を持っているんです。働き方による線引きがない。口先だけじゃなく、体現していく、仕組みごとひっくり返しにいく覚悟があるんだなと思いましたね。

 

ーありがとうございました! 特定の個人ではない、働くメンバーたちで組成された「経営管理組合」による意思決定。運用する中で見えてくる課題もあると思いますが、一つずつ向き合っていきたいと思います。