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4500人の不動産オーナー様とのやりとりをオンライン化。 東急住宅リース株式会社がこだわる「不動産オーナーへ提供する価値の向上」とは

不動産テックが注目を浴びる中、不動産管理会社の先進的な取り組みについて知りたい! ということで、当社取締役・岡村雅信(おかむら・まさのぶ/写真右)とともに、東急住宅リース株式会社の執行役員である佐瀬篤史氏(させ・あつし/写真左)にお話を伺ってきました。佐瀬氏は、事業戦略本部長 兼 戦略企画部長として、新規事業などに関わっていらっしゃいます。
ご活用いただいている当社サービス・OwnerBoxについてもご利用の感想なども聞いてきました。

聞き手:青柳真紗美
撮影:加藤日高

 

オンラインを活用し、より価値あるオーナー様サポートを

――佐瀬さん、本日はありがとうございます。まず、不動産オーナー様の満足度向上のために貴社として取り組まれていることをお聞かせください。

佐瀬 不動産オーナー様のニーズは、突き詰めれば全て「資産を活用したい」というところに落ち着きます。われわれは「不動産資産」の活用、運用をお手伝いすることで利益を生むことに取り組んできました。

具体的には、アナログなところだと、税務相談などを挙げることができます。
例えば不動産相続の場面では、専門の税理士に相談することで様々なメリットがあります。相続に当たっては確定申告を行う必要がありますが、相続税の申告期限から5年間は還付請求ができるんですよ。そこで相続財産を評価し直すと、税金が還付されるケースも少なくない。一昨年には約1億円が還付された事例もあります。

あとはリノベーションのサポートなども行なっています。
賃貸不動産のリノベーションって、今まではあまり積極的に行われてこなかったんです。
60〜65平米ぐらいのファミリータイプでリノベーションの見積もりを取ると500〜600万円はかかってしまう。しかし、それで賃料がどのくらい上がるのかと考えると……。例えば月額15万円ほどの物件ならせいぜい2、3万円なんですよ。年間の家賃収入が多くても36万円程度しか上がらない。これを10年間で回収することを考えると360万。そうなると300万ぐらいがリノベーションにかけられる予算の限界なんですね。
私たちはこれらの現状を鑑みて、施工会社と提携し300万円以下でできるパッケージ商品を開発したり、部分的なリノベーションをオーナーさんに提案したりもしています。

こういったアナログな税務やリノベーションのサポートも進めながら、デジタルの部分でもできることがないか模索してきました。
その施策の一つがOwnerBoxです。
オーナー様への月次報告はこれまで、訪問、電話、郵送などで対応していたのですが、これをオンラインでもできるようにしようと。
OwnerBoxは武井さんのアイデアから始まっていますが、マネーフォワードさんとも組む構想が生まれていて、オーナー様の不動産資産管理のサポートと利便性向上を実現できると考え、導入を決めました。

―― OwnerBoxのお話が出てきました。ありがとうございます! 現在の活用状況について教えていただけますか。

岡村 現状、約1万5000人の不動産オーナー様がOwnerBoxのアカウントに登録されています。東急住宅リース様では、区分保有のオーナー様と1棟所有のオーナー様で担当部署が分かれています。今は区分保有のオーナー様を担当している部署だけでご利用いただいており、1棟オーナー様担当の部署でも、今後導入予定です。
登録数15000ユーザーに対し、アクティブに利用中のオーナー数は4500ユーザーを突破しました。

今一番、活用していただいているのは先ほどもお話のあった月次収支報告。今まではFAX・郵送などで対応していたものをオンライン化しており、ここが一番利便性が高くなったという声をいただいています。
他にも、メッセージや自社の付帯サービスを表示する「お知らせ機能」などもご利用いただいています。先日リリースした「メッセージ機能」はまだ現場では使えていないのですが、今後、オーナー様とのやりとりに活かしていこうという声も挙がっています。

「OwnerBox」サービスイメージ

月次収支報告をオンライン化。社内の反応・反発は?

――導入にあたって社内の反発や不安などはありませんでしたか。

佐瀬 不動産オーナー様はご高齢の方が多いので「利用されないのでは」「意味がないんじゃないの」という声はありました。
ただ、最初に導入を決めたのが区分保有のオーナー様を担当する部署だったのでそれらの懸念は比較的早く払拭されたように思います。転勤中に家を貸しているオーナー様や、投資目的のオーナー様には喜んでもらえる機能なのでは、という意見も聞かれました。
どちらにしても収支報告を郵送している状態は変えていきたかったので、まずはこの収支報告の部分を活用して、会う必要があるときは会えばいい、という感覚で始めました。

岡村 不動産オーナー様への対応については事前に議論しましたね。インターネットのリテラシーも人によって様々ですし、新しいサービス自体に拒否反応を示す方もいる。そこで当社側でコールセンターを立ち上げ、オーナー様からの問い合わせやクレームなどもケアできるような体制を構築しました。
導入前には社内説明会なども重ね、社内の皆さまに理解をいただいた上で運用を開始しました。

佐瀬 これはぜひダイヤモンドメディアの皆さんにお伝えいただきたいことなのですが……。OwnerBox導入後、システムに不具合が生じた時に、あるオーナーさんがダイヤモンドメディアさんのことを調べたらしいんです。どんなシステム会社が対応してるんだ、と。
その時に、御社のホラクラシー経営の記事などを見て「いい会社じゃないか」「今後、応援していくから頑張って」というメッセージをいただいたこともありました。

岡村 嬉しいですよね。ありがたいです。

 

――これからのOwnerBoxに期待することについてお聞かせください。

佐瀬 現状ではOwnerBoxを通じて私たち側から情報を発信しているだけなので、今後は双方向のコミュニケーションツールに育てていきたいと考えています。
また、他のシステムなどともシームレスに連携が取れるようになっていくと良いですね。
当社ではOwnerBoxの他にも、入居者向けの専用サイトも運用しています。例えばWeb申し込みから届いた入居希望の情報をそのままオーナー様への報告に使えるようになるなど、システム連携していくことによって使い勝手はさらに向上していくと思います。

 

テクノロジーによって対応の質を向上させ、業界を変えていく

―― ベンチャー企業と積極的に取り組みをされているところも御社の特徴だと思います。それは御社の方針なのでしょうか。

佐瀬 はい。これからはそうしていくべきだ、というのが代表の北川の考えです。
リアルエステートテック、不動産テックは今やっと動き出そうというところで、いろいろな技術やサービスが生まれてきている局面です。
自社だけで開発を進めようとしたら限界がありますし、スピード感も出ませんから、ベンチャー企業などとコラボレーションしながら外部の知見や知識を得ていくことは必須だと考えています。

―― 不動産テックの進化に伴い、どんな変化が生まれると思いますか。

佐瀬 どうしても現場では、資料を手作業で作成して送る部分などに多くの時間を割いています。これが、システムで自動的に作成された資料を担当者が確認して、オーナーさんにオンラインで送付する、という流れになったら、より対応の質を上げることができます。
それだけで、業界はものすごく変わると思っています。システムによって生まれた時間を、オーナー様の資産価値を向上させることに使っていきたいですね。

岡村 そうですね。ただ、現場は大変でそれどころじゃない、みたいな実情もあったりすると思います。実際にサービスを導入していただいて、付加価値が高い提案をできるようになったという会社さんが出てこないと、我々のようなサービスにはなかなか共感は得られないだろうとも理解しています。
ですから、OwnerBoxも東急住宅リース様のビジョンに合わせて、現場で使っていただけるサービスに育て、実績として多くの企業さんに伝えていけるようになるといいなと思っています。

佐瀬 今はいかにエコシステムを作るかが重要だと思うんです。技術力や営業力で一時はトップにいられたとしても、競争の中で逆転することもしばしば。
しかしエコシステムを構築できたところは、他社の参入障壁も高く、生き残っていけると思います。iPhoneのプラットフォーム戦略などが良い事例ですよね。Appleは決して携帯端末の性能で勝ったわけではない。
エコシステムを作るためには業界のルールをうまくシステム化することが不可欠です。不動産業界であれば、仲介会社や管理会社、不動産オーナー、入居者等への理解が深く、ノウハウを持っているところと組まないと難しいですよね。
ダイヤモンドメディアさんは協業しながら事業を進めることが得意な会社さんだというイメージがあります。結果的に他社との差別化も進んでいくのではないでしょうか。

OwnerBoxも、オーナー様と管理会社をつなぐエコシステムをいかにして作るかが重要になってきますね。もちろん見た目やUI、UXも重要ですが、情報の経路を作っていくことが大事です。
これはシステム会社だけでも、管理会社だけでもできないことなので、一緒に取り組んで業界の新しいスタンダードを作っていきたいですね。

――ありがとうございました!

※内容・肩書き等は2018年11月1日のインタビュー実施時のものです。